要望「これでデザイン賞を取ってほしい」に頭を抱える
実は、このシリーズでデザイナーの方にお話を聞くのは初めてなんですよ。今日はよろしくお願いします。改めて、皆さんのお仕事について教えていただけますでしょうか。
普段は業務用機器のプロダクトデザインを担当しています。家電や家具、文房具など、身の回りにある工業製品をデザインするのがプロダクトデザインの仕事ですね。

工業製品のデザインというのは、カッコいい見た目にしたり、使いやすい形にしたり……ということでしょうか?
そうですね。さらに、その製品の機能や販売戦略、ターゲット、製造コストなども頭に入れないといけません。そのうえで、「お客さんにどういう形で届けるべきか」を各担当者と一緒になって考えるのが、プロダクトデザインの重要な役割になります。
確かに、「このデザインは使いやすいけどコストがかかる」とか「見た目がオシャレすぎてオフィスで浮く」とか困りますもんね。製品を理解したうえで手がける、という意味では、UIデザインも同じですか?
同じですね。自分の仕事は、お客さんが製品をどう使うのかを分析するところから始まります。やりたいことに対して、どう表現して、どう操作させてあげるのが一番良いかを考えます。メニューの階層やボタンの割り当て、画面の配置、LEDの配色まで担当することもありますよ。

家電についているLEDもUIデザインの範囲なんですね。
色や光り方でLEDの「意味」が変わるんです。たとえば「使用状況を赤の点滅で知らせる」という仕様があったら、「それはやめましょう」と別の色を提案することもありますし。
それはどうしてでしょう? 赤の点滅って、目立つからいいような気もしますが。
赤の点滅は危険や故障を連想させるので、そうでない場合は避けたほうがいいんです。あとは色弱の方でも色の区別がつくように、ユニバーサルデザインにも配慮したりとか。
LEDひとつにもそこまで考えることがあるんですね……。今市さんが担当したロゴやパッケージのデザインも、製品を十分に理解したうえで臨まれるわけですよね。
そうですね。制作側の思いももちろん大事なのですが、それ以上に商品を手に取られる方がどう感じるのかを意識しています。製品に込められた思いを届けるには、どういう形がベストなのか、手にとっていただいた方に喜んでもらうにはどうすればいいのか、日々、試行錯誤しています。

ロゴやパッケージ以外をデザインされることもあるんですか?
はい、案件によってはWebサイトやチラシ、ネーミングなども提案します。展示会で必要だったり、販促で使うものだったり、それぞれ求められるものも異なっています。
なるほど。どんな製品でどんな思いが込められているのか、それをユーザがどう見てどう使うのかなど、ひとくちにデザインといっても、たくさんの要素から成り立っていることがわかりました。大変なお仕事ですよね。
いえいえ、ありがとうございます。
では今回のPressITは、どんなデザインのオーダーがあったんでしょうか?
最初は「デザイン賞を取ってほしい」と言われました。つまり、「カッコよく作ってください」と。
え。ここまで「カッコよさだけじゃなく、色々考えてデザインをしていますよ」と説明していただいたんですが……。
まぁ、正直「困ったなぁ」と(笑)